「妊娠はしてます。だけど、相手は細矢さんじゃないんです」

「きちんと説明してくれるよね」

あやちゃんは泣きじゃくりながらもポツリポツリと話し始めた。


「お腹の子の父親には妻子がいてまだ離婚ができてなくて、だから堕ろしてきてって言われて。晴子に相談したら晴子の彼が合コンを開いてくれてそこで適当な男と関係を持てばその人に付き添ってもらって堕胎費用もだしてもらえばいいって」

「オレは本当に君とした?」

「してないです。口や手でがんばったけど、ぜんぜん勃ってくれなくて」

「でも、形跡があったけど」

「あれも、千佳がAVを撮る時に使う偽物の精液を渡してくれて、ダメだったらそれを垂らしておけばそれらしくなるからって」

「そう、お酒に何か入れた?オレはお酒に強いわけじゃないからほとんど飲んでいなかったのに記憶をなくすほど酔うのはおかしいとおもう」

「それは、岸さんがスピリタスっていうお酒を細谷さんのグラスに入れてました」

スピリタスってアルコール度が96%とかいう強い酒だ。

「ホテルにはどうやって?」

「管さんと晴子が一緒にホテルまで連れてきてくれて、細矢さんの服を脱がせた後、管さんと晴子は隣の部屋に行きました」


「オレは、過ちを犯してもいないし、単に君たちに騙されたってこと?君の不倫の尻拭いでオレは彩春と婚約破棄までしたってこと」

あやちゃんは両手で顔を覆うと泣き崩れた。

「不倫相手はだれなの?オレにはそれを聞く権利があると思うんだけど」
これほどまで、低く冷たい声がでるなんて自分でも知らなかった。

「それは・・・」

「とりあえず、今までの話は一旦白紙にもどすから。考えることが多いからもう帰ります」

泣き続けるあやちゃんをのこして部屋を出た。



ふざけてる。
なんでオレがこんな目に遭わないといけないんだ。
彩春に連絡をしたがブロックされていて話をすることができない。