送ってもらった地図で千佳ちゃんのマンションはすぐにわかった。
部屋に着くと、千佳ちゃんはもうアルバイトに行ったようだ。

「千佳から部屋を使っていいって言われているから、入ってください」

「はい」

女の子の一人暮らしらしく白で統一された部屋はかわいらしかった。
ローテーブルを挟んで何を話せばいいのかわからなくなりどうでもいいことを言ってしまう。

「千佳ちゃんは夜勤とかそういうの?」

「千佳はAV女優のバイトをしてるんです」

思いもしなかった返事が来て、会話が弾むことがない。

「今後の事を話し合おう。オレ達は知らないことが多い、あやちゃんは子供を産みたい?それとも産みたくない?オレはあやちゃんの気持ちを尊重したい」

「細矢さんはお姉ちゃんのことどう思っているんですか」

そう話すあやちゃんの声は震えている。
そうだろう、オレだってまさか一夜限りの過ちの相手が彩春の妹だなんて思いもしなかった。
結婚しても彩春とは義理の弟となり、苦しめてしまうことになる。

「正直に言うと、彩春のことを愛しているし、今でも結婚したいと思う。でも、それは諦めないといけないと思っている」

「・・・さい」

あやちゃんはボロボロと涙を流しながら何かを言おうとしてもそれが言葉として認識することができない。

「うっ・・・ごめ・・さい」
「おね・・・ご・・・さい」

テーブルにうつ伏せて泣き続けるあやちゃんをただ正面に座って見てるだけだ。
こんな時は、肩を抱いたり抱きしめたりしてあげるのかもしれないが、恋人同士でもましてや目の前で泣き崩れる女性に対して愛情すら感じていない。ただ、お腹にオレの子供がいるのなら単にオレの子供の母親だという感情しかない。

「産みたいんです、ずっと悩んでいたんです。でも、私の勝手でこの子を殺すことはできないんです。ごめんなさい。ごめんなさい。おねえちゃん」

「わかりました、認知もします。子供のことを考えると結婚することを前提に考えていきましょう」

「ごめんなさい」

「そんなに謝らなくていいです。オレにも責任があるんですから」

「違うんです、ごめんなさい、おねえちゃん」

どう対応すればいいのかわからない。

「ごめんなさい、嘘なんです」

嘘?

「妊娠していないってことですか?」