神様は残酷だ。
まさか、あやちゃんが彩春の妹だったなんて。
どんなに不本意でも、責任を取らないといけない。それが、彩春との約束だから。
きちんと話をしなければと思っても考える事を放棄したい、逃げてしまいたい。
そんな思いで部屋の隅でぼんやりと過ごしていた。
気がつくと日曜日もあと2時間で終わる時間にスマホに着信を知らせる呼び出し音が鳴る。
もしかすると彩春かもしれないと急いでスマホを見ると画面には“あやちゃん”という文字が写っていた。


「細矢さん、話があります。会ってもらえませんか」

逃げていても仕方がないんだ。

「そうですね、話をしましよう」

「今、千佳のところに泊めてもらっていて、菅さんの彼女じゃない方です。明日の夜、千佳は泊まりでアルバイトに行くので部屋で話をしてもいいって言ってくれたので、千佳のマンションの地図をLINEに送っておきます」

菅の彼女?そういえば、ハルコちゃんとか言う子だったか、単なる知り合いというよりも随分と仲が良さそうだった。

「わかった、明日の夜に会おう」


そう答えて通話を終了した。

相馬朱夏、彩春の妹。
それしか知らない彼女とオレは結婚をする。

「はぁ」

いくらため息をついても過去は変えることはできない。

いい加減、腹を括ろう。

憂鬱な気持ちで出社すると菅と栗田が、あやちゃんと話をしたのか声をかけてきた。
さらに、堕胎の費用は少しだが支援してやると上から目線で言ってきたが、初めはあやちゃんも堕ろすと言っていた、まるでオレがその提案を了承するのが当たり前のようだった。

生まれてくるであろう命に対してどう考えているんだろう。
まともに相手をするのが面倒で、何も言わずに二人から離れた。