彼がデキ婚するので家出をしたらイケメン上司に拾われました。

コーヒースタンドに近づくと急に身体がこわばってしまう。
朱夏もいるんだろうか？
朱夏には会いたいくない。
朱夏は家族だけど、自分だけ楽に生きている朱夏を羨ましいとも思ったし、恨めしいとも思った。
そして、私は朱夏のことが・・・

お店に着くと窓際の二人席にすでに悠也が座っていたので、エスプレッソを購入して悠也の前に座った。
お昼も気になったが、骨折したんだろうか？でも、そんなことを聞いて未練でもあると思われるのが嫌なのでその言葉グッと堪えた。

「待たせてしまってごめんなさい」

魂がここになかったのか、声をかけるとピクリと身体が動き私の存在にようやく気がついた。
「あっ、いや大丈夫。それに今日は休みだったし」

「そう」

エスプレッソを一口含むとガツンとした苦味が口中に広がり不安と不快感を鎮めていく。
諏訪さんも来てくれる。
大丈夫。
と、思っていたが肝心の悠也は沈黙を保ったままだ。

「話があるから呼んだんでしょ、出来れば早く終わらせてほしい」

悠也は「ごめん」と言うとコーヒーを口に含むと飲み込む際、喉が鳴っていた。
それからまた沈黙
いい加減にしてほしい。

「話が無いなら帰るね」

その一言で慌てたのか二人掛けの小さな丸テーブルはカタっと揺れてコーヒーがソーサーに溢れた。

「本当にごめん」

「謝罪はいらない、朱夏の子供の事って聞いたから来たの、話さないなら」

そう言って立ちあがろうとすると慌てて引き留めるような仕草をする。
「ごめん、あっ、ごめん」

謝ってばかり。
いわゆるイケメンというわけじゃ無い、だけど一緒にいると安心できて癒された。
だけど・・・
誠実な人だと思っていたのに、裏切った

裏切った人から聞かされた話は、私を混乱させた。