「・・・ま」

「そ・・ま」


誰かが呼んでる
悠也？
そんなわけない
話を聞きたくない

「相馬」

ゆっくりと目を開けると諏訪さんが心配そうな表情で覗き込んでいた。

「泣いていたのか」

諏訪さんはそういうと座ったままきつく抱きしめてくれて背中をポンポンと叩いてくれた。
泣き疲れてしまって体に力が入らないからそのまま諏訪さんの腕の中で目を瞑った。
諏訪さんは何も言わずずっと抱きしめてくれる。
その温もりが暖かい。

「母さんから電話があったの」

「うん」

「でも、本当は妹と話をさせるための電話だった」

「うん」

「結局母さんは私が苦しんでいても妹の味方だった」

諏訪さんはその言葉には無言で髪を優しく撫でてくれた。

「まだ話をしたくないって言ったのに」
「私、妹に酷いことを言ったの」
「自己嫌悪した、今更責めても意味がないのに」

「でも、相馬が一人で我慢することは無いと思うぞ」

「でも、略奪女とかお父さんの不倫相手と一緒とか言った」

「それは、ほぼ当たっているんじゃないのか」

「妹が不幸になればいいって思った」

「まぁそれは、仕方がないだろう。むしろ我慢せずに面と向かって言ったらどうだ」

「そんなことしたら、本当に嫌な女になりそう」

「むしろ、妹の方が嫌な女だろ。というか、男が最低だろ」

ふっ

急に体の中心からむず痒いものが溢れてまるでくすぐられているような感覚になり笑いが漏れてくる。
諏訪さんは私の髪をといていた手で今度はポンポンと優しくたたく。

「やっぱりデキる上司ですね」

「ああ、俺もそう思うよ」

「全て肯定してくれるんですね」

「相馬が言った言葉に否定する部分がないからな」

「お帰りなさい」

「ただいま」

諏訪さんから体を離して窓の外を見るとすっかり日が落ちていた。

「もう夜だったんだ」

「帰ってきたら暗い中に倒れていたから驚いたよ。庭、すっかり綺麗になったな」

「ブタクサがすごかったんだけど、諏訪さんは平気だったんですね」

「あれがブタクサなのか、俺は花粉症はないけど、近所の人に恨まれていたかもしれないな」

ふふふ
ははは

何だかわからないけど、何がおかしいのかわからないけどちょっと笑った。

「ピザでも頼もうか？」

「はい、テリマヨチキンで」