「とりあえずは草むしりからだよね」

木かと思ったら私の身長ほどのブタクサが無尽蔵に生えまくっていて庭の原形がわからない。

花粉アレルギーがなくてよかった。って、諏訪さんも平気だってことよね?
でも、ご近所さんには申し訳ない気がする。
ゴミ袋にブタクサを抜いて入れていく。

広いお庭

引き戸の玄関といいベランダというか縁側?敷地も屋敷自体も結構ありそう。
どうして諏訪さんが一人で住んでいるんだろう?
本当はバツイチとか?

余計な詮索をしないでちゃっちゃと草むしりをしよう。

ブタクサを一掃するとブロック塀の隅から紫陽花が現れた。
来年、この花が咲くのを見るのが楽しみかも。
来年?
来年までいてもいいんだろうか?
好きにしていいって言われたけどここの本当の持ち主はいつ戻ってくるんだろう?
紫陽花の木以外何もない庭を眺めながら、なにか実なる木も植えたいけどそれだと重すぎないだろうか?
もし諏訪さんが結婚したときに奥さんになる人とか嫌な気持ちになるとか?
考えすぎか
どちらにしても木を植えるなら諏訪さんに相談しよう。


集中していた為、気がつくととっくにお昼はすぎ2時になろうとしていた。
縁側に座って握っておいたおにぎりを庭を見ながら頬張る。

懐かしい

昔はこんなに大きな家ではなかったけど小さな庭のある戸建てに住んでいて猫の額ほどの庭でオクラとかインゲンとかちょっとした野菜を育てていた。でもそれも父親が自分の歳の半分ほどの女に溺れてキャッシングを繰り返して貢ぎ続け家のローンを払うことが出来なくなった。
そのため慰謝料も養育費も無く両親が離婚をしたからそれからは怒涛の日々だった。

「ふう」

そんなことを考えても仕方がない。
柑橘系とブルーベリーの木もいいかも。
実がなればマーマレードやジャムが作れそう。
実がなるまで私がここにいることはないかもしれないけど。
花とやっぱり野菜も植えよう。
新鮮な野菜でサラダを作ると朝から楽しい気持ちになる。
諏訪さんからのミッションだけど土をいじっていると嫌なことを考えないで済む、それに諏訪さんとの共同生活は楽しいかもしれない。

庭はここまでにして茶の間にいくとテーブルに置いておいたスマホに母からいくつか着信がついていた。
着信拒否はしているが、朱夏と悠也からも結構な着信記録が残っていた。
ため息をついてから母親に折り返しをするとすぐに電話に出た。

「やっと電話に出たわ。大丈夫?どこにいるの?心配しているのよ」

「安全なところにいるから大丈夫だから、気持ちの整理はまだかかりそうだけど」

「そう、ちょっとまって」

そう言われて仕方なく待っていると

「お姉ちゃん」

今1番聞きたくない声が聞こえてきた。