彼がデキ婚するので家出をしたらイケメン上司に拾われました。

田沼英子は一瞬固まってから私を見下すように笑い出した。

「10年前の事を何言ってんの。時効ってのがあるのよ、バカみたい」

「ええ、時効はあるけどそれはあくまで不貞の事実を知った日から時効が発生するので、今日からとなりますね。借金から私と妹を守るために母は離婚をしましたが、その借金の原因が不倫によるものだと今、わかりましたし田沼英子さんと父の関係も今、この動画と写真でわかりました。帰って母に報告して慰謝料の請求をします」

「そんなこと、知らなかったなんてことあるわけないじゃない」

「母が今まであなたにコンタクトを取ったとはありますか?無いですよね?知らなかったんですから。気がついたら、家のローンが払えなくなって急遽の退去でしたから。その時には、父も行方が分からなくなっていたので、その理由も今、わかりましたから、まさかマンションを買ってたなんて青天の霹靂です」

「ちょっとどけて」と、昌希くんと甘えた声を出してた相手を押し退けて足速に出ていった。


隣を見ると、見る影もなく見窄らしくなった父さんを見る。

「ねぇ父さん、知ってる?」

その言葉に反応して顔を上げた父さんと目が合った。

「朱夏の不倫相手の愛人が田沼英子なの、朱夏は単なる性欲処理で田沼英子にはいろいろと貢いでいたみたい。ついでに言うと他にも2人の愛人がいて今、三人の奥さんから慰謝料請求されている。私も、母さんに言って慰謝料の請求をするつもり。そのためにこのスマホは私が預かるけどいいよね?」

父さんはすっかり魂の抜けた表情で呆けていた。

「私たちはもう行くから、支払いは済ませるからゆっくり食事をして帰って」

「彩春」

「今からこの動画を母さんに見せるけどどうする?どっかに行ってる?」

父さんは小さく頷く。

「行くところは?」

今度は首を横に振った。

財布から一万円札を一枚取り出すと父さんの目の前に置いた。
「ビジネスホテルにでも泊まれば?」

そう言い残して、昌希さんと二人で店を出た。