江ノ島のシーキャンドルを眺める砂浜に二人で並んで座っている。
日曜日なだけあって道路も混んでいたが、江ノ島海岸にもたくさんの人やサーファーがいた。

江ノ島神社を参拝してから生しらす丼やたこせんべいを食べた。仲見世通りは沢山の人で賑わっていてお土産品をみているだけでも楽しい。結構な運動量にすっかり足が痛くなって砂浜で休憩することにしたのだ。
何も話さなくても肩を寄せているだけだ心地よい。

前を歩く学生らしいカップルが菓子パンを食べていると、急降下してきたトンビに菓子パンを強奪されていた。

「トンビすごい」

「ちゃんと注意書きがあるんだがな」
そう言って指を差した先に確かに注意書きがあった。

砂浜では小さな子供が引いていく波にバランスを崩して倒れそうなった所をその子の父親らしき人物が抱き上げて抱っこしながら海の向こうを見ている。
その後ろ姿が父親の背中と被る。

目の前に映像が流れる。
小さな手は両脇にいる女性と男性に繋がれ、波が寄せ引く時にぐらつく体を二人が支えてくれる。
私は足を蹴って水飛沫を立てると体がぐらつき尻餅をつきそうになったところを男性が抱き上げてそのまま腕の中に収まる。

「パパぁ」

無邪気な声が聞こえる。
その声は、目の前にいる親子なのかあの日の私か。
朱夏が生まれる前、3人でこの海に来たんだ。だから、海が懐かしいと思ったんだ。

「大丈夫か?具合が悪い?」

昌希さんが指で頬を撫でる、知らぬ間に涙が流れていた。

「平気、ただ」
「大昔、父さんを好きだったことがあった事を思い出しただけ」

「そうか」

しばらくの間、二人で海を眺めていた。