彼がデキ婚するので家出をしたらイケメン上司に拾われました。

バットには下味をつけた一口大の鶏肉が並んでいる。あとは、衣をつけて揚げれば唐揚げになる。
ひじきの煮物を作り、唐揚げをさっぱりと食べるために大根をおろしていると昌希さんが帰ってきた。

テーブルに置いておいた住民票を見せながら「この家の住人になりました」と言うと抱きしめられ「次は戸籍を一緒にしたいね」と軽いキスをした。

ううう、本当にそういうことをサラッと言われるとドキドキしてしまう。

「唐揚げを揚げるから着替えてきて」

「了解」と言って寝室に向かった。

戸籍って、冗談?今は恋人ということでいいんだよね?でも、前の彼女とは3年付き合っても結婚はしなかったというか、彼女が他の人と結婚した訳だけど昌希さんはあまり結婚とか考えないタイプなのかな。
ずっと一緒にいたいと思うけど、昌希さんの家と私の家では差がありすぎるし、私の家族が昌希さんに金銭的なとこで迷惑をかけるかもしれないのは少し怖い。

「旨そう」

「ポン酢おろしにつけると、さっぱりしておいしいよ」

昌希さんは私が言った通りに唐揚げをポン酢おろしについてから口に運ぶ。

「本当だ、いくつでもいけそうだ」

こんな風に美味しいと言って食べてくれると作りがいがある。
母親との会話を昌希さんに伝える時、父親が家も職も無く家にいたことが何となく裏切られた気持ちだと話した。

悪いと思っているなら、裕福じゃなくてもいいから自立して寄生虫のような状態で目の前に現れて欲しく無かった。
きっとあんなふうになっていなければ、母さんの所に戻ってくるわけが無いから。だから、バカにされているようで嫌だった。
そしてそれを受け入れている母さんが気持ち悪い。

「明日の同窓会だけど、やっぱり彩春のことは伏せようと思う」

「え?」
やっぱり隠したい?
「うん、いいよ。二階に行ってる」

昌希さんは焦ったように手を振って否定の意思を表した。

「ごめん、言い方が悪かった。隣にいてほしいがオンライン上には彩春はやっぱり参加できなかったってことにしたいんだ。メンバーのリストが送られてきてそのリストはあくまでも同窓生の名前だけだから彩春は誰にも知られていないし、優も参加してるけど彩春の話は出さないようにしてもらう」

昌希さんはそう言ってからライン画面を表示して目の前でスクロールさせると、一つの名前を指差した。