彼がデキ婚するので家出をしたらイケメン上司に拾われました。

相変わらずお昼になると総務二人組はレストルームでスタンバイしているが、見えないものとして扱うことにしたため、何かを言ってるかもしれないが耳には何も入ってきていない。
来週にしようかと思ったが、あの家に父さんが居ると思うと早く住所を移動したくて金曜日に有給申請をした。

家に帰ると入れ替わりに希未さんと優さんが「後は若い二人で」と若くもない二人に言い残して帰っていた。

「何だか嵐の様な二人ね」

「ははは、優とは中学からの付き合いだけど飽きないよ。さて、部屋を見てみようか」

出来上がってのお楽しみということで施工中は部屋を覗かなかったから、荒らされて以降初のお部屋拝見だ。

破損のなかったそのままの扉を開けると、私の口も開きっぱなしになった。

「何これ?」

「リノベーションだって言ったろ」

目の前には入り口の扉もこの家の外観とも違いするぎる今風の光景が広がっていた。

今まではベッドやトレーニング用の腹筋マシーンを置くためにフローリング風マットが敷かれていたが、今はガチでフローリングに変わっている。前よりも少し部屋が狭くなっているように感じたがそれは、壁がクローゼットに変わっていた。窓も外側は今までの雰囲気のままだったが、内側はアクセントウォールを使用した壁に合わせて黒っぽい色に変わり、蛍光灯は壁に設置された間接照明になっていた。

「今度スタンドライトを買いに行ってこよう」

「前の面影がないんだけど」

「直せばいいとかそんな生やさしい気持ちは無かったからね。示談をのむ条件として俺が納得する部屋にすることって言ったんだ。じゃなければ、警察に被害届を出して単なる修繕でもかまわないってね。旦那も自分の不倫のことがあるから大ごとにしたくないみたいだし、二つ返事だった。慰謝料はまだ時間がかかるが部屋が最優先だったからな」

「この家の中にこんな部屋があるなんてびっくりだよね」

「今回フローリングに変えたことでここの床は丈夫になったから、いくらでも運動ができる」

「腹筋マシーン以外にも何か買うの?」

「いいや、ベッドでできること」

「オヤジギャグだね」と言った時にはもうベッドの上だった。