希未さんと優さんに見送られて家を出る。
そう言えば昨日作ったものを昌希さんに渡すのを忘れてた。

希未さんに教わったストラップ。
穴の空いてないオパールを針金でグルグルと巻いて天然石のビーズをつけて金具をつけてそこに紐をつけた。オパールは昌希さんの誕生石だ。

今日帰ったら渡そう。

お昼にレストルームに行くとあの2人がスタンバイしていた。

「ストーカーうざっ」

化粧を直している間、色々とごちゃごちゃ言っていたが耳に蓋をするの術で違うことを2つか3つじわ〜っと考えたりすると周りの雑音が聞こえなくなる。
いつまでこれを続けるのか知らないけど、私が昌希さんと付き合っているということは考えないんだな。

二人はまだ何かを言っているようだが、ラインに気になるメッセージが入ったので何も言わずラインを見ながらレストルームを出た。

急いで帰宅すると希未さんと優さんの三人で猛烈に餃子を包む、昌希さんが沢山のビールを買って帰宅すると同時にすき焼き鍋を使った餃子パーティを開始した。

「彩春と一緒に暮らしているとすき焼き鍋の有能さに驚かされるよ」

「ビールビール」

「うまそう!」

ビールをグラスに注ぎ四人で乾杯をする。
他愛のない話をしながら大量の餃子を消費していく。

優さんも手伝ってもらったし、ラインの話をしてもいいよね。

「今日ね、出雲典代さんからラインのメッセージがきたんだけど」

餃子を掴もうとしていた箸が一斉に止まり、三人の顔が私に集中する。

「どうして」と昌希さん

「出雲准教授の嫁だっけ?」と優さん

「あー妹さんの不倫相手の奥さん」と希未さん

「そう、まずは出雲元准教授は懲戒解雇で、fumiの正体がわかったそうです」

「fumi!」と昌希さん

「SNSストーカー」と優さん

「あああメンヘラ2?てか、出雲ザマァ」と希未さん

「希未っ」
慌てて優さんが止めたけど、三人の反応がたのしい。

「彼女も桜花大学の学生さんで、自宅ポストに手紙を入れたりしたことをご両親に話して慰謝料の請求をしたって。出雲元准教授とは離婚で早く別れたいから養育費は免除で慰謝料の請求だけにするって」

「奥さん辛いだろうな」
昌希さんはあの時、奥さんと同じテーブルについていたから状況をよく知っているから思うことがあるんだろう。

「実は卒業生から訴えられたんだって」

「「「何それ」」」

そうだよよね、私もびっくりしたもの。

「単位をちらつかせて身体の関係を持っていたらしい。セクハラとアカハラ」

「叩けば埃が出まくりそうだな」
昌希さんはそういうと呆れたようにつぶやくとビールを一口飲んだ。

「田沼英子だけは他のと違って、結構貢いでいたみたいでそれを考慮して慰謝料の請求をしたって」

希未さんがそこに食いつく。
「愛人にも本命がいたんだ、ゲスぅ」

「貢いでいたって、そんなにいい女なのか?」

「なに優、興味あるの」
希未さんに睨まれて優さんが苦笑いしながらビールをグッと飲む。

「お父さんの愛人だった」

「「え」」
希未さんと優さんがシンクロする。

「父さんが40歳半ばくらいの時に20歳くらいだった田沼英子と不倫してたから」

「「うわ」」

その反応はよくわかる。
変な空気になりそうだったところで昌希さんの言葉が空気を変えてくれた。

「奥さんも少しはスッキリするといいな」

みんなで「そうだね」と言って餃子パーティは終了した。