10分後。

「お待たせしました〜!三種特盛、10辛のお客様は…こちらですか?」

と、先程の店員さんが、カレーのお皿を持ってきました。

「いや、俺じゃないです。彼女です、彼女」

と、奏さんは全力で手を振って、自分じゃないアピールをしていました。

何故でしょう。例え奏さんが注文したのだとしても、何も恥ずかしいことではないでしょうに。

「畏まりました〜!」

と、店員さんは、私の前に特盛カレーのお皿を置きました。

特盛なだけあって、かなりボリュームがあります。

白米は何合分あるのでしょう。

「はいっ、ではこちらが、夏野菜カレー並になりま〜す」

「はい…ありがとうございます…」

「それでは、ごゆっくりどうぞ〜!」

と、店員さんは、伝票を置いて去っていきました。

とても清々しい店員さんです。

…さて、それはともかくとして。

カレーが届きましたね。

「とてもスパイシーな香りです。これがカレーライスという食べ物なのですね」

と、私は言いました。

この香りだけで、久露花局長は失神しそうですね。

何だか、目がチクチクする気がするのですが、気のせいでしょうか。

目に異物が混入した可能性があります。

「俺…10辛なんて初めて見たよ。毒々しい色…」

と、奏さんは呟きました。

確かに、私のカレーと、奏さんのカレーとでは、色が違いますね。

私の方が、より真っ赤な色をしています。

毒々しいですね。

「る、瑠璃華さん…。大丈夫?凄い匂いするけど…」

と、奏さんは言いました。

私のカレーから立ち上る香りは、まともに嗅ぐと、かなりの刺激を感じます。

匂いだけで、他者を威圧する食べ物とは…。

威厳を感じますね。

「問題ありません。では、早速食べてみましょう」

と、私はスプーンを手に取って言いました。

匂いは確かに、刺激物以外の何物でもありませんが。

これでも、食べ物であることには変わりないのですから、まずは食べてみて批評するべきです。

「…もぐ」

「…どう?…瑠璃華さん、大丈夫?」

と、奏さんは聞きました。

奏さんは両手に、水の入ったコップを一つずつ持って、私に差し出していました。

私が万が一火を吹いたとき、消火する為でしょう。

しかし、その心配は必要ありません。

「もぐもぐ。こんな味なんですね」

「だ…大丈夫…?」

と、奏さんは戦々恐々としながら聞きました。

私は、関係なくスプーンを入れ続けました。

「はい。問題ありません」

「か…辛くないの?」

「舌がビリビリしますね」

「だ、だよね。辛い?」

と、奏さんは心配そうに聞きました。

ご自分のカレーを放置して、私の心配をしてくださるとは。

とても優しい方ですね。

そして、辛いのか、という質問でしたね。

この、舌に感じるビリビリとした感触が、辛味というものなのでしょうね。