「…瑠璃華さん…」
と、奏さんは驚いたような顔で言いました。
…私は、逃げていました。
奏さんの為と言いながら、親友を快く送り出す為と言いながら。
その実、私は自分の心と向き合うことから、逃げていたのです。
私の心は、こんなにも素直に、奏さんを失いたくないと叫んでいたのに。
それを無視することは、結局出来なかった。
情けないです。
でも、これが偽らざる、私の本当の気持ちなのです。
行かないで欲しい。寂しい。奏さんがいなくなったら悲しい。
なんと単純な気持ちでしょう。
…なんと我儘な気持ちでしょう。
でもこれが、私の本音。私の、素直な気持ちなのです。
あなたは正しかったですね、久露花局長。
自分の心に、素直であれと。
本当にその通りでした。
ずっと言いたかった気持ちを、ようやく奏さんに伝えることが出来て。
状況は何も変わらなくても。むしろ、奏さんを困らせるだけですが。
でも、自分の心を偽り、本音を我慢し続けるよりは、ずっと気持ちが楽になりました。
「…済みません。このようなことを言っても、奏さんを困らせるだけですね」
と、私は言いました。
言いたいことを全て言ったら、少し落ち着きました。
ようやく、正気に戻った気分です。
「瑠璃華さん…今の」
「今のは…忘れてください。私の、身勝手な我儘です」
と、私は言いました。
私の感情など、奏さんが気にすることではありません。
「奏さんの幸せを優先してください。それが、私の幸せです」
「でも、寂しいって言ったよね。行かないでって…」
「それは…言いましたね。私の、偽らざる本音です」
と、私は言いました。
一度言ってしまったのですから、今更撤回することは出来ません。
認めざるを得ません。
私は奏さんがいなくなることを、寂しく思っているのだと。
本当は、行って欲しくないのだと。
でも、それとこれとは別の話です。
「私の我儘の為に、奏さんの幸福を邪魔したくはありません」
と、私は言いました。
先程の、情けない感情の発露も、私の本音ではありますが。
こちらも、同じく本音です。
行って欲しくはない。しかし、奏さんには幸せになって欲しい。
両立出来ない二つの思いが、私の中にあります。
人間の心というのは、なんと複雑なものでしょう。
難しくて、ややこしくて…単純とは程遠い。
非常に扱いにくくて、手に余る代物です。
と、奏さんは驚いたような顔で言いました。
…私は、逃げていました。
奏さんの為と言いながら、親友を快く送り出す為と言いながら。
その実、私は自分の心と向き合うことから、逃げていたのです。
私の心は、こんなにも素直に、奏さんを失いたくないと叫んでいたのに。
それを無視することは、結局出来なかった。
情けないです。
でも、これが偽らざる、私の本当の気持ちなのです。
行かないで欲しい。寂しい。奏さんがいなくなったら悲しい。
なんと単純な気持ちでしょう。
…なんと我儘な気持ちでしょう。
でもこれが、私の本音。私の、素直な気持ちなのです。
あなたは正しかったですね、久露花局長。
自分の心に、素直であれと。
本当にその通りでした。
ずっと言いたかった気持ちを、ようやく奏さんに伝えることが出来て。
状況は何も変わらなくても。むしろ、奏さんを困らせるだけですが。
でも、自分の心を偽り、本音を我慢し続けるよりは、ずっと気持ちが楽になりました。
「…済みません。このようなことを言っても、奏さんを困らせるだけですね」
と、私は言いました。
言いたいことを全て言ったら、少し落ち着きました。
ようやく、正気に戻った気分です。
「瑠璃華さん…今の」
「今のは…忘れてください。私の、身勝手な我儘です」
と、私は言いました。
私の感情など、奏さんが気にすることではありません。
「奏さんの幸せを優先してください。それが、私の幸せです」
「でも、寂しいって言ったよね。行かないでって…」
「それは…言いましたね。私の、偽らざる本音です」
と、私は言いました。
一度言ってしまったのですから、今更撤回することは出来ません。
認めざるを得ません。
私は奏さんがいなくなることを、寂しく思っているのだと。
本当は、行って欲しくないのだと。
でも、それとこれとは別の話です。
「私の我儘の為に、奏さんの幸福を邪魔したくはありません」
と、私は言いました。
先程の、情けない感情の発露も、私の本音ではありますが。
こちらも、同じく本音です。
行って欲しくはない。しかし、奏さんには幸せになって欲しい。
両立出来ない二つの思いが、私の中にあります。
人間の心というのは、なんと複雑なものでしょう。
難しくて、ややこしくて…単純とは程遠い。
非常に扱いにくくて、手に余る代物です。


