さて、思わぬ邂逅がありましたが。

改めて、歩きながらイルミネーションを眺め。

気になったことがあります。

「…奏さん。さっきから気になっていることがあるのですが」

「…」

と、奏さんは無言でした。

「…奏さん?」

「…え?あ、ごめん。何?」

「どうしましたか、ぼんやりして」

と、私は聞きました。

寒さで、声が出なくなりましたか。

「いや、さっき…渾身の告白を、碧衣さんに邪魔されたもんだから…気が抜けちゃって…」

と、奏さんはぶつぶつと、小声で呟いていました。

…?

「渾身の告白とは、何のことですか」

「あ、ううん何でもない…。何でもない、大丈夫だよ」

と、奏さんは慌てて否定しました。

奏さんは何でもないと言いますが。

何度も言いますが、何でもないと言う方の九割は、何でもあるのです。

深く追及したいところですが。

それよりも私は今、気になっていることがあります。

「奏さん。何だかこのイルミネーション会場」

「うん」

「カップルが多いと思いませんか?」

「それは、まぁ…クリスマスだしね。イルミネーションと言えば、やっぱりカップルとか家族連れが、」

「爆破したいですね」

「…過激…」

と、奏さんは呟きました。

いえ、ちょっとそのような衝動に駆られただけです。

他意はありません。

ちょっと爆破したくなっただけです。

あまりにも、イチャイチャしているカップルが多かったもので。

「でもさ、瑠璃華さん」

「何ですか?」

「俺達も一応、男女なんだから。傍から見たら、今瑠璃華さんが爆破したいって言った…その、カップル…に見えるのかもしれないよ」

と、奏さんは言いました。

私は、かなりの衝撃を受けました。

まさか、そうなのですか。

「なんてことでしょう…。爆破されるのは、私達だったということですか…」

「そんな、爆破にこだわらなくても…。今日くらい良いじゃん、クリスマスなんだから」

と、奏さんは言いました。

クリスマスは、全てを許す免罪符にはなりません。

クリスマスだから、で何でも許すのは、良くないと思います。

しかも。

「!奏さん見てください、あれを」

と、私は指差しながら言いました。

私の視線の先には、きらきら光るハートのアーチと、その前にハート型のベンチが置いてあります。

そこに座ったカップルが、イチャイチャと写真を撮っています。

「あー…。物凄く分かりやすい、カップルスポットだね…」

「…ベンチごとふっ飛ばしたいですね」

「…過激…」

と、奏さんは呟きました。

いえ、ちょっとそのような衝動に駆られただけです。

大したことではありません。