「わっ…。どうしたの、それ」

と、奏さんは驚いて言いました。

そう、そのような反応を期待していました。

「夏休みでの経験と、先日の家庭科の調理実習で、私は料理に対する、深い知見を得ました」

と、私は説明しました。

そして、机の上に置いた…ハンカチに包まれたお弁当箱を指差しました。

「そこで、今度はお弁当を作ってみてはどうかと思い、今朝、実行に移しました」

「お弁当かぁ…。自分でお弁当作るなんて、偉いね」

と、奏さんは褒めてくれました。

ありがとうございます。

「でも、大変じゃなかった?朝からお弁当用意するの…」

と、奏さんは聞きました。

「いえ。やはり人間の感情を理解するには、人間の生活を再現するのが一番ですから。苦ではありません」

「瑠璃華さんの、そういう勉強熱心なところ、凄く良い長所だと思うよ」

と、奏さんは言いました。

ますます、お褒めの言葉ありがとうございます。

やはり親友に褒められると、モチベーションが段違いに上がりますね。

「奏さんに、一番に見てもらいたかったのです。私が人生で、いえ、アンドロイド生で初めて作ったお弁当を」

「うん。見せてもらえて光栄だよ」

「ではご覧ください」

と、私は言いながら、ハンカチをほどきました。

すると。

「…あのさ、一つ言っても良い?」

と、奏さんは言いました。

まだ、お弁当箱を開けてもいないのですが。

「何でしょうか?」

「俺、アルミのお弁当箱なんて、人生で初めて見たよ」

と、奏さんは真顔で言いました。

そうですか。

お弁当箱と言えば、このアルミ製か、曲げわっぱのどちらかだと思っていたのですが。

奏さんは、初めてだそうです。