「なんで? 穂村さん、困ってたから」

「イヤな予感がする」

「……僕がドジりそうってことかな」

「それもある」

 けど、とこっちを見て、一言。

「単純に、ジェラシーってやつ」

 パチパチとまばたきをしながら、わたしは首をかしげる。

「え? 穂村さんは、女の子……だよ?」

「知ってる」

 真顔で答えられて、ハテナが増えていく。

 もしかして、穂村さんとデートする男の碧に妬いてるってこと?

 ううん、さっきの流れからして、その線は薄そう。じゃあ、なぜ?

 うーんと考えていると、椿くんがため息を吐いた。

「やっぱ、今の忘れて」

 ふいっと視線をそらされた。
 あれ? なんか、怒ってる?

「あの、椿くん?」

 話しかけても、黙ったまま反応がない。

 数秒して、何か思いついたような顔をしたと思ったら、耳元に甘い声が落ちてきた。

「碧、今日一緒に風呂入る?」

 ブワッと耳が熱くなる。真っ赤になった頬を押さえて、あわてふためく。

「なっ、……なんで⁉︎」

「珀とは入ってた」

「あ、あれは、事故みたいなもので」

 近すぎる椿くんに、ドキドキする。
 さりげなく体を遠ざけるけど、グッと顔が迫ってきた。

「ふーん、珀はよくて、俺はダメなんだ?」