「なんで中等部がいるんだ?」

「君、不法侵入じゃん。ダメだよ」

「……あの、すみません」

 あわてて立ち去ろうとするけど、簡単に腕を取られた。

 前にも一人立ちはだかって、通れない。

 どうしよう。なんだか怖い。

「それに、今女子トイレから出てこなかった?」

「だよな」

 ハッとして、胸の前で腕を抱える。
 気が緩んでいたけど、カッターシャツがむき出しになっていた。

 カーディガンで前を隠すけど、彼らの視線が痛い。

「てかさぁ、この子、よく見たら噂の三葉くんじゃん」

「ほんとだ。弟に妙なこと聞いてから、気になってたんだよな」

 のぞき込まれて、反対を向く。
 早くこの場から逃げたいのに、動けない。

「ちょうどいいから、確かめてみようぜ」

 なにするつもり?

 角の死角に追いやられて、壁と板挟みにされた。

 腕は掴まれたまま、もう一人の手がカーディガンに伸びてくる。

「や、やめて下さい」

 声も貧弱で、ほとんど出てないようなもの。

 誰か……、椿くん、助けて。

「君ら、なにしてるの?」