「ここなら、人に見られずに済むわよ」

 やたら協力的だと思ったら、先輩たちは八城兄弟のファンらしい。安斎さんたちに写真を頼んでいたのは、どうやら彼女たちのようだ。

 あとは琥珀さんを呼んでくるからと言っている。

 うう、あまり会いたくないな。

 首筋に変な汗が流れていく。考えていたら、急にお腹が痛くなってきた。

「すみません、トイレ……行ってもいいですか」

「いいけど、他の生徒に見つからないようにね」

 先輩方から忠告を受けて、わたしはこそっと生徒会室を出る。

 椿くんが付いてきてくれると言ったけど、目立つからと止められていた。早く済ませて戻らないと。

 辺りを見渡し、すばやく女子トイレへ入る。体が戻っているから、男子トイレでは気分的に抵抗があったから。

 もう、琥珀さんも来てるかな。手を洗いながら、ふと思い出す。

『お風呂で倒れた時、部屋まで運んだお礼はまた後日してね』

 浮かび上がるくちびるを振り消して、呼吸を整える。

 あれは事故。キスにカウントされない!

 あれから、まともに顔すら見れていないから気まずい。

 トイレから出たとき、近づいてきた数人の男子に囲まれた。
 みんな体格がよくて、わたしたち中学生より随分と大人に見える。

 ……しまった。見つかっちゃった!