八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!

 六年前の夏。小学二年生だったわたしは、お父さんとお母さんに連れられて、この街を訪れた。

 遠い親戚の悲しい知らせを聞いて、香典を渡しに行ったらしい。

 椿くんたちの、お母さんのことだ。

 このとき、八城家のお父さんと初めて会った。

 すぐ帰るはずだったのに、いつの間にかわたしがいなくなって。瞳の色が左右違う猫に案内されて、神社へたどり着いたと教えてくれた。

 椿くんのお父さんと話したのは、この時が最初で最後。
 会ったことがない親戚というのは、わたしがと言う意味だったみたい。

 あの日の真相を知って、わたしと椿くんはお互いに笑う。

「あの時と同じ。私たちをあおちゃんと引き合わせてくれたように、この猫ちゃんが、あなたたちを見守ってくれているのかもね」

 お母さんの言葉に、胸がキュッと熱くなる。

 ずっともやもやしている心の雲が、やっとわかった気がする。

 昨日、本当のことを打ち明けたとき。安斎さんと矢野さんは、あっけらかんとしていた。

『なんとなく気づいてたよ』

『知りませんでしたけど、これからもツバミツを推していきますね〜』

 穂村さんやみんなと出会って、一緒に出かけたり、学校生活が楽しかった。
 これ以上ステキな仲間に、この先出会えるとは思えない。

 八城兄弟との距離も、少しずつ縮めてきた。好きな人にも、めぐり逢えた。

「お父さん、お母さん。わたし、やっぱり行きたくない。まだ、ここにいたい。友達も、できたの」

 緊張で手汗がすごい。

 何言ってるのって、怒られるかな。置いて行けるわけないって、あきられるかな。

 でも、最初からムリだと決めつけたくない。
 伝えてみなくちゃ、やってみないとわからないことばかりなんだから。

「……あおちゃん、それ、本気なの?」