数人の男子が、わたしのまわりに集まってきた。
 あっという間に囲まれて、酸素が薄くなる。何度経験しても慣れない。

 わたしは今、男子なのだから仕方ないこと。みんな、友達として話に来てくれただけ。
 そう言い聞かせるけど、心の奥では不安が残っている。

 ーーもっと骨張ってゴツゴツしてるかと思ったけど。なんていうかさ。

 ーーどっちなのか、確かめようと思って。

 あの時、琥珀さんのおかげで、男子だと証明された。わたしが女子なんじゃないかと、疑う人はいなくなった。

 なのに、もし気づかれていたら……と思うと、ヒヤヒヤして息が苦しくなる。

 金の玉を、サッと制服のポケットへしまった。

「えー、見せてくれたっていいだろ。なんかいいもんなのかー?」

「隠すなよー」

 笑いながら、ズボンのポケットに手を入れようとしてくる。

 ヒッ! や、やめてください!

 バンッーー!
 ものすごい音がして、教室中がしずまり返った。

 後ろの席の椿くんが、無表情でこっちを見ている。無表情だけど、とても怒っていると分かる空気だ。

「あ……、えーっと、次ってなんだっけなぁ」

「た、たしか化学じゃね? もう移動しないとな」

 男子たちは、そそくさと自分の席へ戻っていく。

 困っていると気づいて、助けてくれたのかな。

 お礼を言おうとしたけど、目をそらされた。無言のまま立ち上がって、椿くんは教室を出て行った。

「八城くんって、イケメンだけど怖いよね」

「眺めてる分にはいいけど、関わりたくない」

 わたしのせいで、椿くんのイメージが悪くなってしまう。不器用なだけで、ほんとはとても優しい人なのに。