ついに最後の競技である紅白リレーが、ピストルの合図で始まった。


 俺とカズマのチームである白は、4人中の2位という好スタート。


 次々とバトンが渡っていく中、第3走者目…つまり俺の2つ前の男子がこけた。


 俺たちの白チームは次々に他チームに抜かされて、ついには最下位まで落ちてしまった。


 これはヤバいな…。


 立ち上がって最後まで走った彼からバトンを受け取ったカズマが懸命に走るが、それでもついた差は一向に埋まらない。


 てことは、勝敗は俺にかかってるってことか。


「ライト、頼むっ!」


 俺はカズマからバトンを受け取って、精一杯走る。アンカーだから他の選手の倍を走るが、そうだとしてもなかなか盛り返せない差だった。


 ヤバいな、これはもう…。


 諦めかけたその時、


「ラ、ライトくん、頑張れぇー!」


 と、サキが俺を応援する声が聞こえた。


 …そうだ、サキが俺を見てるんだ。カッコ悪いとこなんて、絶対に見せられない。


 すると俺の中から何かがふつふつと湧き上がってきた。


 1人、また1人と抜かし、ついに2位まで上り詰めた。


 でも、1位の選手が抜くに抜けない。…でも!


 俺は最後の力を振り絞って、1位でゴールテープを切った。


 その瞬間、会場がワァァアッ!と盛り上がる。


『優勝は…脅威の3人抜きをした白チーム!』


 そのアナウンスが聞こえると、同じチームの選手たちが、俺を囲んで喜んだ。


 よ、良かった…!


 一気に肩の荷が降りたのを感じた。


 あ、そうだ。サキは?


 応援席の方を見ると、こちらを笑顔で見つめていた。


 …そーいえば、さっきあいつ、俺にふいうちとかしてきたよな。俺ばっかドキドキするなんて、悔しい。


 俺はリレー選手たちの喜びの輪を抜けて、応援席の方へ走った。


「え、ラ、ライトくん!?」


 サキは俺がここに来たことにとても驚いているようだった。


 …俺もお前をドキドキさせてやる。


 俺はサキに顔を近づけて、その白い額に甘く口づけた。俺がゆっくりと離れると、サキは右手で俺がキスしたところを押さえて、俺を凝視した。


 ふふっ、照れてる。真っ赤な顔で目を開いて俺を見つめて。…ただただ可愛いだけなんだよ。


「…さっきのお返し」


 俺がそう言うと、サキはより一層顔を赤くした。


 俺、この学校で"太陽"って言われてるらしいけど、俺が太陽ならサキはひまわりだな。


 俺の横で、俺だけを見て、笑っててほしい。


 これからも、ずっと。