俺がハチマキを交換したいのはサキただ1人。でも俺は今動けない。…サキ、ここに来てくれないかな。


「ラ、ライトくんっ!ハ、ハチマキ、交換…しようっ!」


 俺にとって都合のいい幻聴が聞こえた気がして、周りを見回した。


 するとその声の主がそこに立っているのが見えて、さっきの言葉が幻聴でないことを証明していた。


「…っ、サキっ!」


 俺は女子たちの壁を乗り越えて、好きな人の手を握って走り出した。


「ちょっとライトくん!どこ行くの!?…なんでそんな地味な子に構うの!?」


 後ろから西条の声が聞こえた。


 …は?サキが地味だって?


 ふざけんな。お前より100倍可愛いわ。


 でも言いたいこと言っていたら、休憩時間が少なくなる。


「…俺にとってサキは特別なんだよ」


 俺がそういうと、西条は悔しそうに唇を噛み締めた。