ライトくんに連れてこられたのは、ひっそりとした運動場の端っこだった。


 ライトくんは私の腕を離すと近くに座った。


「ラ、ライトくん…?」


 私がそう声をかけるとライトくんは、はぁー…とため息をついて私を見上げた。


 私よりも15センチくらい身長の高いライトくんを見下ろすのは、とても新鮮だった。


「…ごめん、サキ。いろいろなんかムカついて連れ出した」


 と言って、また視線を下ろす。


 ムカついたって、何に?


「何にムカついたの?」


「いや、…いろいろ」


 あー、これは言ってくれないやつだ。


「…そっか」


 なんかそっとしておいた方が良さそう?


「じゃあ、私戻るね。…西条さんに言われた仕事、やらなきゃ」


 そう言ってライトくんに背を向ける。


 …トラックのライン引く道具って、体育倉庫にあるのかな。


 と、数歩歩いたその時。


 グイッ、と、右腕を後ろに引かれた。


「…その仕事、俺がしておくから。サキはしなくていいよ」


 と、私の耳元で言うと、私の横を足早に通り過ぎていった。


「…っ!?」
 

 耳が、あつい。