sideサキ


「よし、頑張って誘って来て!」


「う、うん…!」


 今は金曜日の昼休み。カズマくんの予定だと、今日アイカちゃんを日曜日のデートに誘うらしい。


「…サキ、やばい。緊張で手が震えて来た…」


「カズマくん、アイカちゃんを誘うだけだよ?こんなんで緊張してたら、デート当日どうするの」


 カズマくんは深く息を吸って、吐いた。


「…よし、行ってくる」


「行ってらっしゃい!頑張って」


 今日は、私とSunniesのみんなは外でお昼を食べることとなっている。


 ライトくんは購買にお弁当を買いに行ってるので、今待ち合わせ場所にいるのはアイカちゃんだけ。


 だから今がチャンスなんだ。


 私は物陰に隠れて2人を見守る。


 ぎこちない動きのカズマくんが、1人でベンチに座っているアイカちゃんに近づいて、話しかける。


 2人は少しの間言葉を交わし、カズマくんはくるりと回ってこちらに向かって来た。


 心なしか、その顔は少し複雑そうだった。


「サキ…日曜断られた…」


 うそでしょ。あんなに頑張って誘ったのに。


「えっ!?な、なんで…」


「俺にも分からない。…なんか、『サキに悪いから』の一点張りで」


 え、『私』…?


「サキ、なんかしたのか?」


「いやいやいや、私何もしてないよ」


 なんで私?身に覚えが無さすぎる。


「うん、だと思うよ。…じゃあなんで『サキに悪いから』なんだろうな」


 そう言うカズマくんの表情は、断られて悲しい、というよりも、理由が分からなくてモヤモヤしている、みたいな感じだった。


「…私がアイカちゃんに直接聞いてみるよ」