真冬の言葉に風音と葉月は顔を見合わせ、「う〜ん」と言いながら考える。

三人は霊を祓う特別な力を持っており、悪霊を日々除霊している。一ヶ月ほど前までは毎日のように悪霊が街を彷徨い、学校を抜け出して除霊をした日もあった。だが、ここ最近は悪霊の姿は全くと言っていいほど見かけていない。

「それなら、僕の屋敷に来てくれないかな?ちょっと手伝ってほしいことがあってね」

突然背後から声をかけられ、三人は驚きながら振り返る。そこには、和服を着た緑の目をして、目の色と同じ髪を一つに纏めた男性がいた。その人物は、三人のよく知っている人だ。風の神である颯(はやて)だ。

「颯、手伝ってほしいことって何だい?」

風音が訊ねると、「屋敷の書庫の整理を手伝ってほしくてね」と返される。

颯は森の奥にある屋敷で暮らしており、風音たちも時々足を運んでいる。だが、屋敷には一人も使用人はおらず、洗濯も炊事も掃除も全て彼一人が行っている。

「あの家に書庫なんてあったんだね、知らなかった」