「それならもう思いついているわ」

イヅナは三つ編みの中から針金を取り出し、ニコリと微笑む。失敗の許されない脱出が、今、開幕した。



「ちょっと、イヅナしっかりしろ!」

風音が狼狽える横で、イヅナがお腹を押さえて苦しんでいる。額には汗が浮かび、顔を顰め、見ている側は声をかけることしかできず、もどかしさを感じるほどだ。

「ううっ……痛い……!!」

「イヅナ、イヅナ、大丈夫か?どの辺りが痛い?そうだ、薬!鎮痛剤を!」

床に倒れ込んでいるイヅナに風音が大声で声をかけ続けていると、「おい、うるさいぞ」とゴブリンが檻の外から話しかけてくる。風音はすぐに檻に縋るように近付き、訴えた。

「イヅナが、「お腹が痛い」ってすごく苦しそうなんだ!ただの腹痛じゃなくて、盲腸とかかもしれない!すぐに医者を呼んで!」

「……生憎ここには医者はいない。俺が診てやろう」

そう言い、ゴブリンが檻の鍵を開けて中に入ってくる。風音はゴブリンの背後に立ち、ゴブリンが苦しみ続けるイヅナに触り出した。