「人を無闇には傷付けられないよね」

葉月の言葉に颯が頷く。風音と真冬は颯に顔を向けた。彼はいつになく真剣な顔をしている。

「彼は普通の人じゃない。特別な力を持っている。だけど、妖でも霊でもない。彼を攻撃すれば間違いなく彼は命を落とす。そうなれば我々は「救世主」ではなく「殺人犯」だね」

部屋の空気がどこか重くなったその時、「お待たせしました〜!」と明るい声で言いながらエマが飲み物をトレイに乗せて持って来る。

「えっ、何ですかこの空気!」

「倒す術がないらしい。だけど、殺さなくても彼から力を奪えばいいんじゃないかなとワシは考えたんじゃが……」

ムカエルの言葉に、全員がもう一度顔を上げてムカエルの方を向いた。