商店街で咲也くんにデートに誘われ、手を引かれていったとき、蓮くんと目が合ったときのことが思いだされた。

 蓮くん、さびしげな目をしてた……。

「それで気づいた。おれは、一千花のことが好きなんだって……」

 頭が真っ白になった。

 だって、わたしたちは幼なじみで、親友みたいで、恋愛感情なんて入りこむスキマもなくて――。

「おれじゃ、ダメか……?」

 まっすぐに、わたしを見つめる蓮くん。

 わたしが返すべき反応が、何通りも、頭のなかに浮かんだ。

 たとえば、「またまた~、からかってるんでしょ?」とか、「蓮くんにはファンが大勢いるじゃん」とか、冗談にまぎらわせる反応。

 ――そんなのダメだ!

 蓮くんの真剣なキモチには、真剣に応えなきゃ!

 わたしは覚悟を決めて、口をひらいた。

「蓮くん、ごめん。……わたし、蓮くんのこと、幼なじみだと思ってて、これからも、きっとそう。わたしは、咲也くんに本気で恋してるんだ。だから……ごめんね」

 声をふるわせながら、なんとか言いきることができた。

「そうか……ダメか……」

 ため息まじりに言う蓮くん。

「ホントにごめ……っ!」

 わたしは言葉を切って、息をのんだ。

 蓮くんの顔が、イビツにゆがんでいたから!

「愛葉一千花! にっくき魔法少女アイカよ! オレさまのうらみを思い知るがいいっ!」

 もはや、蓮くんの声じゃなかった。

 地の底から響いてくるような、この不快な声は――。