君は,君は。


あーあ。

だめだなぁ。

分かってたのに,瑞希の中の梨々香に勝てる気がしないなんて言う風に落ち込むなんて。

梨々香がいなくても同じことだって分かってたのに。



「…? 唯,なんかあったの?」



梨々香の心配そうな声色に,私はパッと離れた。

もう,ここまでにしなきゃ。

後ろに瑞希の視線を感じる。

そんな風に見なくても,話したりしないのになぁ。



「なんでもないよっ。次,国語だって」



まぁ,梨々香ならたぶん,もう準備も終わってるんだろうけど。



「ふふっ。もう準備したよ」

「やっぱり! 私まだだから。またね!」

「うん」



まだ見てる瑞希に,私は意地で笑いかける。

大丈夫。言わないよって。

伝えられないくせに,こんなことばかり頑張れるなんて私。

ほんっとバカだなぁ。