君は,君は。

「あれ? 遅かったね。いつも掃除が終わったらすぐ帰ってくるのに……トイレ?」

「まぁ,そんなとこ」



そりゃ~ぁ,掃除の帰りにあんなのに出くわしたらスタスタ帰ろうなんて思えないよ。

1番に話しかけてきたのは梨々香。

それだけで胸が痛む。



「梨々香,可愛い」



私はむぎゅっと梨々香に抱きついた。

嫌だ,嫌だ。

自分が,嫌いになりそうだから。



梨々香は「えっ,急に何? 照れる…でも唯のが可愛いよ」



返ってきたのは,嘘の無い笑顔。

私だって嘘で言った訳じゃない。

でも,その純粋さが痛かった。

そんなわけがないのに。

ぎゅっと梨々香を抱き締めると,良い匂いがする。

女の子の匂いだ。



「うん。ありがと」



目の端に,水滴。