君は,君は。

意味もなく両手をあげて,おろおろとする私。



「あー唯聞いてた?」



久しぶりに名前を呼ばれて,そんな雰囲気じゃないのにどきりとする。



「あ,うん。ごめんね。聞こえてしまって……」



どうしよう。
盗み聞きとか,嫌われるっ。

どこまでも自分本意で,私はぎゅっと目をつむった。



「しゃーね。こんなとこで話してたのも悪いし。頼むっ今の話内緒な」

「あ,うん」



もっとまともなこと言えないのかな,私。

嫌われるどころか,謝られてしまった。



「あははっ瑞希おつ~!」

「うっせーわ。ってか,ざっけんなよお前。石井の声がでけーからだろーが」

「ドンマイドンマイ。まぁ,俺知らねぇけど」

「はぁ!?! おい待てっ」



私の横をすり抜けていく2人。