君は,君は。

自分すら傷つかないように,瑞希には勝手に頑張って,勝手に成就させていて欲しかった。

そしたら佐藤くんは梨々香と付き合うチャンスを逃すことになるけど,知ったことか。

知らない人まで気遣う余裕なんてない。

私は,外野で居たかったの!!

キリキリどきどき痛む心臓を,きゅっと掴む。

こんな最前席,用意してくれなくて良かった。

いらなかった。

なのに…!

全力で走って着いた家。



「うっ,ぅう……」



走ったせいで,胃がぐるぐるして気持ち悪い。

気持ちの整理がつかない。

自分のベッドで慣れた匂いが鼻を掠めた時,我慢していた涙が一気に溢れ出す。

悲劇のヒロイン面だと言われても構わない。

泣くことは,全人類共通の権利だ。

誰にも文句は言わせない。

正しいも正しくないも,決めていい人なんて居ないんだ。



「ふっ……ふっ…は」


…。



「瑞希の……ばか」



あほ,おたんこなす,人でなしっ。



「私の………おおばかもの…」


泣きつかれた私は,赤子のようにすぅっと意識を手放した。