未来人だ!!


思わず叫んでしまいそうになり、慌てて両手で自分の口を塞いだ。


未来人は深く帽子をかぶっていて、顔を確認することはできなかった。


箱を置いた未来人はそのまま玄関に背中を向けて歩き出す。


またコツコツと革靴の音が聞こえてきて海斗はようやく大きく息を吐き出した。


口を塞いだ時に思わず呼吸まで止めてしまっていたのだ。


今更ながら心臓がバクバク早鐘をうちはじめて、全身に汗が浮かんでくる。


「行くぞ」


まだ呼吸が整っていない海斗を連れて健が茂みから飛び出した。


男が向かった大通りへと出ると、その姿が月の光によって浮かび上がっていた。


暗闇に溶け込まない男のスーツは確かに未来的に見えた。


2人は電信柱の影やゴミ捨て場の影に身を隠しながら男を尾行した。


2人の下手な尾行でも気が付かれなかったのは、男と十分に距離があったからだろう。


やがて男は大きな屋敷の前で足を止めた。


スーツのポケットからカードキーを取り出して玄関を開け、中に入っていく。


「ここが未来人のアジトか!」


健が興奮した様子で言うので「そんなわけないだろ」と、突っ込んだ。