暗黒ギフト1

けれど結局返事をしそびれてしまったことに気が付いたのは、随分経過してからだった。


せっかく憧れている男子生徒に話しかけてもらったのに、うまく返事をすることができなかった。


少し落ち込んだ毎日を送っていたとき、再びチャンスが訪れたのだ。


ある日の放課後掃除当番で学校に残っていると、大田と秋田の2人が雑巾を片手に廊下へ出てきたのだ。


2人共掃除当番で、しかも飯田くんと同じ廊下掃除担当だったのだ。


廊下に出てきた2人と視線がぶつかり、飯田くんは慌てて笑顔を浮かべた。


『2人も掃除当番なんだね』


嬉しい気持ちを押さえて質問する。


すると2人は目を見交わせて『そうだよ。そっか、飯田くんも当番?』と、聞いてきた。


『うん。そうなんだ』


憧れの2人と会話していることが嬉しくて、頬がにやけてしまう。


このまま仲良くなることだってできるかもしれないのだ。


飯田くんにとってはまたとないチャンスだった。


でも……。


『それなら、俺たちの分まで掃除しておいてよ』