「ありがとう」


「でも聞きたいことがあるんだ」


「なに?」


「ちょっと移動しようか」


海斗は優しく言うと、健と飯田くんを連れて教室を離れたのだった。


「どうして万引なんてしようと思ったの?」


生徒のいない教室に入り、しっかりとドアを閉めてから海斗は質問した。


その瞬間飯田くんの顔色が悪くなったのを見逃さなかった。


「そんなの出来心に決まってんだろ。ほしいマンガがあって、でも小遣いがなくて、それで盗もうと思ったんだ」


黙っている飯田くんに変わって健が言う。


そんな健を海斗は睨みつけた。


「飯田くん。このことは誰にも言わない。だから話してくれないかな?」


青ざめている飯田くんはそれでも簡単には口を開かなかった。


棒立ちになり、何度も周囲を見回したりして落ち着かない様子だ。