「なんでそんなことしたんだよ」


「つい……出来心で」


健からの質問にしどろもどろになって返事をする。


飯田くんは今にも倒れてしまいそうで、心配になってきてしまった。


「本当に、それだけか?」


海斗が一歩前に出て聞くと、飯田くんはビクリと肩を震わせた。


まるでなにかに怯えているように見える。


「本当に、それだけだよ」


声だって震えているし、こんな状態で万引しようとするヤツがいるとは思えなかった。


なにか変だな。


そう思っても、なにが変なのか海斗にはわからなかった。


「どうする? 一応警察に通報するか」


健の言葉に飯田くんがハッと息を飲んで顔を上げた。


「そこまでしなくていいだろ。万引は止めたんだし」


「はぁ? 万引なんて繰り返すものなんだから、ここでしっかりしておかなきゃダメだろ」


健が言っていることは最もだ。


本来なら店員に相談して、警察を呼んでもらうほうがいい。