「うっ……」


言い返すことができなくて数歩後ずさりをする。


母親は盛大なため息を吐き出して海斗に小さめのおにぎりを差し出してきた。


それはサランラップで丁寧にくるまれている。


「それ持って、早く行きなさい」


いくら起こしても起きない海斗のために作っておいてくれたみたいだ。


海斗はそのおにぎりにとびつき、それから「ありがとう!」と大きな声で言うと玄関へ走った。


起きてからもうすでに10分くらい経過している。


通学班は自分を置いて学校へ歩き始めているかもしれない。


小さなおにぎりを口に放り込み、靴をはいて勢いよく玄関を出る。


そのままの勢いで道路へ出ようとしたのに、突然なにかに躓いて体のバランスを崩してしまった。


わっ!!


と、思ったのは心の中でだけだった。


口の中はおにぎりでパンパンだ。


どうにかこけずにすんでホッとし、反射的に自分の足元を確認した。