梓はまるでいたずらっ子みたいな表情を海斗へ向ける。


「深谷くんは1度私を助けてくれたの。覚えてない?」


「え?」


海斗はとまどって瞬きをする。


梓とは今日始めて会ったと思っていた。


でも学校が同じだから学校内で何度か会っていても不思議ではない。


海斗は懸命に記憶を手繰り寄せてみるけれど、その中に梓の姿はなかった。


「ごめん、覚えてなくて……」


申し訳なく感じて頭をかく。


「やっぱり覚えてないよね。うん、当たり前だから大丈夫」


梓は自分を納得させるように言って何度も頷いた。


「私、予知夢を見るようになってから1度だけ学校へ行ったの。その時にも体調が輪うくなったんだけど、その時助けてくれたのが深谷くんだった。ネームを見て名前を覚えていたの」


「そ、そうなんだ?」