どうしてそんな簡単なことに気がつくことができなかったんだろう。


情けなくて笑みが漏れた。


きっと今頃みんな梓の悪口を言っていることだろう。


その場にいない人間のことを悪く言うのは、梓もよくしていたからわかる。


悪い想像をかき消すためにキツク目を閉じてみる。


だけど浮かんでくるのはやっぱり嫌な思い出ばかりだ。


やがて梓は現実から逃げるように眠るようになった。


夢の中にいれば悪いことを考えなくてすむ。


友達がこないことを悲しむ時間だってなくなる。


そうして眠りの中に逃げ込むようになってからだった、梓が妙な夢を見るようになったのだは。


いや、本当はもっと別のキッカケがあったのかもしれない。


けれど梓に思い当たるところはなかった。