男はまっすぐに2人に向かって歩いてくる。


2人は引きつった笑顔を浮かべて「こ、こんにちはー」とぎこちなく挨拶をした。


未来人へ向けて、敵意はないことを一生懸命に伝えたのだ。


男は無表情のまま門の前までやってきて、2人の前に立った。


その身長は夜に見たときよりも高く感じられて、2人は一気に緊張した。


随分と見上げなきゃ黒スーツの男の顔を確認することはできない。


もしもこの男を怒らせたらどうなるだろう?


そう考えると背筋がゾッと寒くなった。


「なにか言えよ」


引きつった笑顔を浮かべたまま健が海斗の脇腹を肘でつつく。



その感触に海斗は思わず「ひっ」と声を上げてしまった。


男の視線が海斗へ向かう。


ゾクリとするほど冷たい視線に全身が凍りつく。


けれどここでなにも言わずに立ち去るわけにはいかない。


相手は海斗の家がどこにあるかも知っているのだ。


「あ、ああ、あの」


声が震えて何度も噛む。