教室から外へ出るともう大半の生徒たちがいなくなっていた。


窓からグラウンドの様子を確認してみると、遊んでいる生徒たちの姿が見えた。


だけどほとんどがすでに帰宅している途中のはずだ。


2人は早足で昇降口へ向かい、公園へ向かった。


グラウンドを通り過ぎる時にハトの姿を確認してみたけれど、すでにそこにはハトはいないようだった。


「メガネっ子に助けられたよな」


グラウンドを走り抜けながら健がニヤついた笑みを海斗へ向ける。


「別に、そんなんじゃ」


海斗は少しだけムッとして言い返す。


誰かに借りを作ったとは思いたくなかったが、今回ばかりは感謝しないといけないかもしれない。


今になって考えてみれば、プリントを忘れて取りに戻ってきたことも偶然じゃなかったのかもしれないと思えてくる。


メガネ女子は2人に少しだけ勇気を与えるために、ざわと忘れ物をして戻ってきたのだ。


なんて、こまで考えるのはちょっと大げさか。


「お前が動かなかったら、殴るか投げるかするしかないと思ってた」