「綺麗な瞳してる」
「えっ……」
少し掠れた声が耳に届く。
黒髪の彼の目には、わたししか映っていない。
その繊細に紡がれた言葉は、わたしに向けられたものだからか、すっと耳に入った。
「名前すずか、だっけ。すずかの瞳、すっげえ綺麗」
この人は、どこかちがう世界を生きているように思えた。
なんの脈略もない言葉だったし、出会って数分で呼び捨てだし。
わたしが望んでいたマオちゃんとの再会ではなかったけれど、茉央さんとの新しい出会いが、わたしのこれからを変える気がしてならなかった。
彼の言葉を反芻する。
瞳が綺麗、だとはっきり口にした茉央さんは、とても純粋で優しい人なんだと感じた。
褒められたのが嬉しくて、彼と目を合わせて微笑む。
「……祖母がイギリスの人で、わたしはクウォーターなんです」
「へえ、だからちょっと碧色がかってんだ」
茉央さんは納得したようにうなずいている。
「はい。でも……あまり好きじゃないんです。この瞳」



