メルティ・ナイト




「いや、俺がうかつにこの辺のバスに乗ったから、そんな勘違い起きたんだと思う」



その言い回しに、すごく違和感がある。

もやもやが消えなくて、思わず素直に問うてしまう。




「えっ……茉央さんは、近所のバスに乗ったらいけないんですか?」

「あーうん、まあ……そんなとこ」



なんだか歯切れの悪い返事を不審に思う。



もしかして、茉央さんは芸能人かなにかなのかな……?

身バレ防止のため、外では公共機関をなるべく使わないようにしているとか。


この容姿ならあり得るから、勝手な判断で納得してしまいそう。

わたしが自説によって想像を膨らませていると、赤坂さんはそんな考えを見透かしたように笑った。



「まあ、茉央だけでなく俺らは、この辺ではちょこっと有名だったりするのよ」

「ゆ、有名……?」


やっぱり、彼らは芸能人なのでは……。


「そそ。あ、芸能人とかじゃないから安心して」

「ひっ……エスパー?!」



思っていたことを当てられて、ぎょっとする。

出会ったときから感じていたけれど、赤坂さんは超人的ななにかを醸し出しているのだ。