「そんな…!何言ってるの。私、貴一がこうして手を差し伸べてくれたこと、どれほど感謝してると思う?いつだって、貴一には甘えて頼ってばかりで、こんなことじゃダメだってわかってるのに…」

「最初に手を差し伸べてくれたのは明菜のほうなんだけどな」

「え?」

「昔…此処に引っ越してきた頃、実はかなり不安だったんだ。でも、いつも明菜が傍に居てくれたから、安心して自分らしく、のびのびとやってこられた。だから、明菜に頼られるのは男冥利なんだよ。このドタバタが落ち着いたら、順序は逆だけど、なるべく早く婚約指輪も用意するから…」

「それはダメ!」

私があまりにハッキリ言ったので、貴一は不思議そう。

「貴一には少しでも早く、自分の店を持つ夢を叶えて欲しいの。それに、私にはこの指輪あるから…」

首からぶら下げたアメジストのリングを握りしめる。