『お前は今日から、名実ともに俺の婚約者だ』



本当に……私が彼の、婚約者になったのかな……。

あのあと、逃げるように走って非常階段を飛び出した。


あのまま一緒にいたら、幸せのあまり泣いてしまいそうだったから。


驚きすぎて現実を受け入れられなくて、結局、図書室に寄るのも忘れて、そのまま家に帰ってきてしまったんだ。

急に逃げ帰るなんて、感じが悪かったかもしれない。

嫌われたり、なんだあいつって思われたりしてないかな……。

早速不安になって、はぁ……とため息をついた。

白神、ルイスさん……。

かっこよくて、本当に絵本の中から出てきた王子様みたいな人だった……。



『お前のことを大切にすると約束する。だから……俺の手をとってくれ』



大切にされるって……どんな感じなんだろう。

自分が大切にされたことがないなんて言い方は、お母さんたちに失礼かもしれないけど……あんまりピンとこない言葉。

よくわからないけど、あの人のそばにいても、いいのかな……。