先に来て座っていたフードさんの姿を見つけて、だらしなく口元が緩む。

運動不足だからか、息が上がっていた。



「走ってきたのか?」

「は、はい」

「ゆっくりでいい。お前を待つ時間は苦痛じゃないからな」



フードさん……。

ただひとり、私に優しさをくれる人。


毎秒ごとに、フードさんが私の中で大きな存在になっていく。

だけど同時に……不安なこともあった。

フードさんはきっと……私の噂を知らないから、よくしてくれている。

もし私の噂を知ったら、フードさんも……。



『お前がそんな女だと知っていたら……端から婚約など申し込まなかった』



私のことを、嫌いになるかもしれない。

それが……今一番恐ろしい。