「困るかな? 夜明からの婚約なら、誰だって大喜びするでしょ」

「そうですよ」



ふたりはそう言っているが、鈴蘭は俺が黒闇神の人間だとは知らない。それに、あいつは家柄で人を判断するような女ではない。



「と、とにかく、調査を始めますので……その期間中は、仲を深めていてください」

「……わかった」



仕方ない……鈴蘭を困らせるのは嫌だからな。

まずは異性として……意識させるところから始めよう。

婚約の準備が整えば、すぐに申し込めるように。

……そうだ、婚約指輪も必要になる。今のうちに指のサイズを聞いておくか。

鈴蘭にふさわしい、上等の指輪を作らせよう……いや、その前に何か鈴蘭に贈り物を用意したい。

結局、礼もできなかったからな……。