世界中どこを探したって、こんなにも愛らしい人間はいないだろう。

俺の世界はもはや、鈴蘭一色に染まっていた。



「お弁当、急いで食べます!」

「ゆっくりでいい。気にするな」



いつも俺に気を使って、急いで食べている鈴蘭。

急いでいる……のは十分伝わってくるが、口が小さいからか食べるのには時間がかかるらしい。

俺は鈴蘭が食べている姿を見ているだけで満足だったから、急ぐ必要はない。

今日も一生懸命食べている姿に、胸を打たれた。

ただ……数日一緒に過ごして、気になることがある。



「いつも同じ弁当だが、食に関心がないのか?」



鈴蘭の弁当は驚くほど小さく、そしていつも同じものが並んでいた。