【side 夜明】



俺の日常はつまらない。

何かに興味を持つことや、心が踊るような出来事もなかった。

だが……今日だけは違う。

朝、目が覚めてからずっと、この時を待ちわびていた。

昨日と同じ時刻。俺はブランのあの女に会うため、支度を進める。

ようやく会いに行ける。今日もあの場所にいるとは限らないが……会えるかもしれないと思うだけで、心臓が高ぶっていた。

どうして俺はこんなにも浮かれている?

わからない……ただ、一刻も早くあいつに会いたい。



『……ご主人、大変申し上げにくいですが、その格好だと不審者に間違われてしまいますよ』



ラフが、こほんと咳払いをするふりをした。



「下手な格好をするより、まだシンプルなほうがいい」



使用人に用意させた、質素な服装。黒のパーカーとスウェットという組み合わせだった。

このような洋服を着るのは初めてで、新鮮だった。

楽だな……寮の中であれば、こういう格好もありかもしれない。