「お前……名前は?」



この人は……誰?

悪い人ではないのかもしれないけど、顔が見えないから恐怖心を抱いてしまう。

名乗っても、いいのかな……。

不安を感じたけれど、怪しい人が私に近づいてくる理由がない。

お金も持っていないし、私に利用価値はない。だから、名前を聞かれてそれを無視する理由もなかった。



「双葉、鈴蘭です」



そう正直に答えたけど、彼は黙ったまま。

ただじいっと私を見たまま動かない。

こちらから顔は見えないけど、見られていることだけはわかるから、気まずさを感じて視線を伏せた。



『べっぴんさん!!』



え……?

この声は……!